監視

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監視

 目を覚ました私は、虫の標本のようにただその場所に固まっていた。どうしてこうなったかの記憶はないが、ここは自分の家ではないことだけはすぐ分かった。  最初は夢の中にいると思っていた。体感で5時間は超えただろうか、太陽の位置が少しずつ動いていくのがわかる。時間がたてど、この状態から解放されることはないのだろうか。それは終わりのない夢を見続けているのか、それとも悪夢というのはこういうものなのか。  今私に見えている風景は家の中。それも台所と玄関の間あたりとよくわからない位置で、そこしか見えない。目を横にやっても、私の見える範囲は変わらなかった。時計はないが、部屋に差し込む光でだいたい夕方あたりかと思う。 そして、あきらめかけたとき一人の女が目の前を通り過ぎた。 うっ、、 一瞬の驚きに声を出しそうになり、なぜか声を押し殺していた。 女は特に私を見る様子もなく、目の前を通り、ドアを閉めた。 ジャーと水が流れる音が聞こえると、またドアを開けて先ほど出てきた場所に戻っていった。 音は少しばかり聞こえた。息をのみ、目に力が入った。私を見ることができないが、きっと気持ち悪い笑みを浮かべただろう。 こんな状態になっているのに、雄である自分が死んでいないことだけは理解できた。
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