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「ああ、なんだかハンバーガーが食べたい」 ビー先輩が言い出した。 エー先輩はひたすら無視だ。 「ああ、ビーフパテから溢れんばかりの肉汁がじゅわっ出てきて……しゃきしゃきレタスとトマトが肉汁に絡み、目玉焼きからは、黄身がとろっと……口の中は卵の黄身がからんだ、香ばしい肉。受け止めきれない肉汁はバンズが優しく受け止める。ああ、ハンバーガーが食べたい」 ビー先輩がうっとりと空中のハンバーガーを手でつかみ、食べる仕草をする。 エー先輩は呆れていた。 「ほんと、ビーはうるさいなあ」 エー先輩はビー先輩のグルメコメントを聞いて、何か感じたようで、突然たちあがった。 「おい、お前もいるか?」 ビル先輩はぼくに確認した。 ビー先輩はエー先輩が立ち上がったから、エー先輩に賛同されたと大喜びだ。 「はい! ビル先輩のハンバーガーへの思いを聞いて、腹減ってきてしまいました」 ぼくが言うと、エー先輩はやれやれと苦笑した。 「かわいい新人後輩も腹が減ったというから、買い物にいってくるよ」 エー先輩がビル先輩に行こうと促した。 「そ、そんな。ぼく、買ってきますよ」 「いやいや、僕たちが行くから大丈夫だよ。君は何者も出入りできないよう、このフロアを見張っていてくれたまえ」 「はあ」 「いいね?」 エー先輩はぼくに念押しした。 エー先輩はさっとスーツの上着を羽織った。10月にはいり、最近夜が遅いとすこし肌寒くなる。 ちなみにエー先輩は夏の昼間でも外出するときはきちんと上着を羽織る。 汗なんかかきませんといった具合に、いつも涼やかな顔をしている。 反対にビー先輩は絶対に冬でも上着は着ない。それこそお偉いさんが集まるから絶対にジャケットがないとダメといわれても、着ないし持たない。 エー先輩にちくりちくりとかなり嫌味を言われ、ビー先輩はしかたなく手で持っていく。 肩回りが窮屈で、スーツの上着が苦手なんだとビー先輩はあとで教えてくれた。 ちなみにぼくはとりあえず上着は持って行く派だ。いつでもどこでもちゃんとした印象が残せるからだ。 「そういうの、性格出るよな」 ビー先輩がからかうように言った。 「いいじゃないですか。君は僕たちに必要な人材ですよ」 エー先輩は天使のように微笑んだ。 で、ハンバーガーに話を戻すけど…… そういって、あの二人は出かけていき、こうしてぼくは留守番係を任命されたのだ。
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