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「先輩、おそかったじゃないですか」 ぼくは先輩たちの姿を見てほっとした。 「おお、よかったな。じゃあ、書類たのむぞ」 山さんが念を押して帰っていった。 なんやかんやいいながら、山さんはぼくのことを心配して一緒にいてくれたのだった。 「はい、お前の分だ」 ビー先輩はふふんと笑いながら、ぼくに紙袋を渡した。 「ありがとうございます!」 ぼくは紙袋を開けた。 いい匂いがする。 ぼくは期待しながら紙袋の中を探ると、中からは高級ハンバーガーが飛び出した。 「こ、これは! いま人気の、スペシャルトリプル月見ハンバーガーじゃないですか! すっごいボリューム!」 ぼくはおもわず興奮した。 「見てください。この肉汁!! 国産牛の赤身を使かっているから、繊細な旨味と肉の甘みまで感じられる。この野菜たちとのハーモニー。そして卵の黄身」 「そんなにうまいか! よかったな、新人」 ビー先輩はニヤッと笑った。 「はい!」 勢いよく返事をしたものの、ぼくはビー先輩の笑みがなんとなくひっかかった。 さっきからずっとニヤニヤしているのだ。 ま、まさか。 「何かあったんじゃ……」 ぼくはエー先輩の方を向く。 「君、そのハンバーガー、うまいって食べたよね」 エー先輩は天使もホレるような極上の笑みを浮かべている。 やばい。絶対この二人はやらかしている。 僕は危機感を感じた。 「だいじょうぶ。今日はもう遅いから」 「そうそう、もう遅いから、大丈夫。安心しろ」 エー先輩とビー先輩はうんうんとうなずきながら、ハンバーガーをほおばっている。 「いったい何が大丈夫なんですか!」 僕は絶叫した。
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