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『ミラージュ・コラージュ』の顛末
今はもう削除してしまったのだが、私がエブリスタに書いていた小説に『ミラージュ・コラージュ』がある。
それは一つのメロドラマなのだが、ヒロインの和歌子が途中で、
「あっ、私は小説の登場人物だわ!」
と気づく場面がある。
しかし、私がそう書いたのではない。
よく作家が、
「書いていると、登場人物が勝手に動いた」
と言うことがあるが、あれは本当のことで、ある時突然、和歌子がそれに勝手に気づいてしまったのである。
それから和歌子は交通事故にあったり、恋人に裏切られたり、散々な目にあう。
これは、そういうことがないとドラマにならないから、私が意識的に書いた。
ところが和歌子は、その度に『ミラージュ・コラージュ』を書いている私に向かって、恨めしそうに言うのである。
「おい、さかしま(これは、私のペンネーム)! さっさとハッピーエンドで終わらせてよ!」
それでも私は小説を続けた。
正直に言って、この話をどう終わらせればいいか決まっていなくて、私はだらだらと、悲惨な事件ばかり起こし続けていたのだ。
今思えば、これは和歌子にとって「無間地獄」に他ならなかっただろう。
ある日、和歌子が言った。
「もういい! 消えてやるわ!」
その時、執筆用のパソコンがシャットダウンした。
再び画面をつけた時、『ミラージュ・コラージュ』の、和歌子に関する部分のテクストが、ぽっかりと消滅していたのである。
これでは小説にならない。
そういうわけで、私は『ミラージュ・コラージュ』を削除した。
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