十五夜の奇跡

3/3
前へ
/3ページ
次へ
それからすぐのことだった。突然、チリンと鐘が一回鳴ると、今度は目の前に白い姿のクロツキが___シロツキが現れた。 「やっほ〜!クロツキ、元気だった?ごめんね、またやっちゃった」 「お前今度という今度は許___」 「あっ、山田ちゃん!元気そうだね、良かった良かった」 「おい、俺の話を___」 「じゃ、帰るね〜」 外見はよく似ていたが、性格は全然違う。私も思わず目が点になる。 「あっ、クロツキ!」 「あ?」 このままでは何も言うことができないまま終わってしまう、と焦って声を上げた。 「ありがとう」 私がそう言うと彼はふっと笑う。 「じゃあな、山田。お前も___」 「あっ、もうお別れは済んだよね。じゃあ、早く帰ってお餅をつこう!」 「お前は説教が先だ…って、は?おい、何で杵なんか出してんだよ。あ、ふざけんじゃねぇぞ!お前、まさか___」 「よいしょー!」 どーん。 再び特大ホームランを打たれて、般若のような顔をしながら、クロツキは月へと帰っていった。 「じゃ、おれも帰るね。バイバーイ!」 シロツキはと言うと、杵に座り、私に手を振りながら、目に見えない速さで飛んでいった。 しん、と部屋が急に静かになった。月明かりの下、そう言えばと、クロツキとシロツキに言い忘れていたことを思い出す。 「私、田中なんですけど」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加