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それからすぐのことだった。突然、チリンと鐘が一回鳴ると、今度は目の前に白い姿のクロツキが___シロツキが現れた。
「やっほ〜!クロツキ、元気だった?ごめんね、またやっちゃった」
「お前今度という今度は許___」
「あっ、山田ちゃん!元気そうだね、良かった良かった」
「おい、俺の話を___」
「じゃ、帰るね〜」
外見はよく似ていたが、性格は全然違う。私も思わず目が点になる。
「あっ、クロツキ!」
「あ?」
このままでは何も言うことができないまま終わってしまう、と焦って声を上げた。
「ありがとう」
私がそう言うと彼はふっと笑う。
「じゃあな、山田。お前も___」
「あっ、もうお別れは済んだよね。じゃあ、早く帰ってお餅をつこう!」
「お前は説教が先だ…って、は?おい、何で杵なんか出してんだよ。あ、ふざけんじゃねぇぞ!お前、まさか___」
「よいしょー!」
どーん。
再び特大ホームランを打たれて、般若のような顔をしながら、クロツキは月へと帰っていった。
「じゃ、おれも帰るね。バイバーイ!」
シロツキはと言うと、杵に座り、私に手を振りながら、目に見えない速さで飛んでいった。
しん、と部屋が急に静かになった。月明かりの下、そう言えばと、クロツキとシロツキに言い忘れていたことを思い出す。
「私、田中なんですけど」
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