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基宮 玲望(もとみや れも)、高校三年生。
瑞希の学校での、目下の親友。……親友、兼、恋人。
サラサラの金髪に翠の目なんて、麗しすぎる外見をしているというのに彼の住んでいるのはボロアパートである。
ギャップがありすぎる、と初めて会ったとき瑞希は思った。
流石に初めてここにきたときはだいぶ引いたので。
現代にこんなアパートがあることも引いたし、こんなところに若い高校生が住んでいることにも引いた。
だが、事情を聴けばまぁまぁ納得はできるものだった。
玲望の実家はだいぶ貧しいらしい。
おまけに兄弟が多くて、部屋が足りなくなったからと、高校生になるなり一人で暮らせと追い出された。
なんて、玲望は笑ったものだ。
別に家族と険悪だとか、そういうわけではないらしいけれど。
春先にはたけのこの煮物なんかを振舞われた。玲望が作ったものだが、そのたけのこは実家からもらってきたものなのだという。一体どこの山から採ってきたのだろう、と瑞希は思ったが、詳しいことはわからない。
そう、たけのこを煮物にするくらいには玲望は料理上手だった。
ボロアパートに暮らしているくらいだから、金に余裕があるはずはない。必然的に自炊生活だ。
凝った料理を作るわけではない。基本的に男子メシ。
けれど男子高校生としてはハイレベルといっていいほどの食事を作れる腕がある。チャーハンを作れば米はパラパラだし、肉じゃがはほっくりやわらか。
初めて振舞われたとき、瑞希は「嫁みたいだ」なんて場違いなことを思ったものだ。
嫁、どころか恋人でもなかった頃なのにである。
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