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自覚したのは随分早かったように思う。春先に出会って夏休みの頃には思い知っていた。
俺はきっとこいつのことが好きなんだろう。女の子を好きになる感情と同じ類のものなのだろう。
相手が玲望、つまり男であったのには戸惑ったけれど、そう大きな問題だとは思わなかった。
昔ならいざ知らず、現代では同性同士で付き合うことだって、簡単ではないけれど少なくとももはや異端ではない。よくあること、でもないけれど、起こったってなにもおかしくないこと。
別に玲望の外見が麗しくて、少々女の子にも見えるような中性的なものだから、なんてつまらない理由ではない。理由の欠片くらいにはなるかもしれないけれど。
それより瑞樹を惹きつけたのは、玲望のちょっと変わった生活と方針。そしてそれを実行してしまう、ストイックで器用なところである。
玲望の生活は非常に貧しい。それは偶然から玲望の秘密を見てしまったときから瑞樹はわかっていた。けれど玲望はそれを悟らせないように振舞う、という方針のもと学校生活を過ごしている。
それは少々変わり者であるといえる。
別におおやけにしてしまってもかまわないだろう。ネタなどになるかもしれないが、高校生にもなってそんなことでひとをいじめたり馬鹿にしたりするような、そんなくだらないやつはほんの一握りだろうから。
なのに、玲望は学校ではしれっとしているのだ。普通にノートも教科書も、学用品も当たり前のように使う。弁当も白米におかずが何品か、なんてごくごくプレーンなもの。
制服だって汚れていたりくたびれていたりすることもない。それどころかワイシャツはいつも、ぱりっとしていた。クリーニングにでも出しているかと思うほどに(これは自分でアイロンをかけているのだということをあとから瑞樹は知った)。
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