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触れたのはほんの一秒もなかっただろう。身を引く。
玲望の丸くなった目と、無表情ともいえる、呆然とした顔が目に映った。
見た瞬間、急速に恥ずかしくなったし恐ろしくなった。なんということをしてしまったのか。衝動的過ぎただろう。
けれど瑞樹はそれを、ぐっと飲み込んだ。腹の下に力を込める。
ここでぎゃんぎゃん騒ぐのはみっともないし、男らしくない。してしまったものはしてしまったのだ。どうしようもない。それなら。
「玲望」
名前だけを呼ぶ。玲望の肩がびくりと震えた。瑞樹が呼んだことで我に返った。そんな顔もする。
「な、なに」
出てきた声は掠れていた。普段、元気いっぱいだったり、ちょっと拗ねたりするような玲望のこんな声は聞いたことがなかった。だからこそ、玲望にとっての動揺を感じることができたのだけど。
「ずっとこうして触れたいと思ってた」
「は、はぁ?」
言った。そしてそれには気の抜けた声が返ってきた。
けれど今度はそれだけではなかった。玲望の顔が、ぱっと赤くなったのだから。そしてくちびる、というか口元も押さえてしまう。
その反応は瑞樹に期待を抱かせた。自分に都合のいいことだけど。
「嫌だったか」
「や、嫌とか、……」
聞いてしまって、だが玲望の反応に思いなおした。玲望は照れ屋であるし、それ以上に動揺してしまっているのだ。嫌かと聞いて、嫌じゃないなどと言うわけが。
よって言いなおそうとしたのだけど。
「んなわけは……」
聞こえた言葉に瑞樹は自分の耳を疑った。
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