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くものふしぎ
くものふしぎ
ぼくは、おばあちゃんちに行くのに、おかあさんとおとうさんといっしょに、飛行機にのりました。
「これより、とうきは離陸します。シートベルトをお確かめください」
ぼくの乗った飛行機は、たっぷり順番を待ってから、ゆっくり、ゆっくり、動き出した、曲がったり、進んだり、止まったりを繰り返して、ぐんぐんとスピードをあげる。
「おかあさん!ぼくこわいよ!」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、手をつないでね。そうだ。お水を飲んだらいいわ。耳が痛くならない魔法のお水よ。」
飛行機はとっても早く走りながら、ちょっと後ろに傾いて、僕のあたまを背もたれにぶつけた。
おかあさんは窓をみていた。
ぼくはおかあさんのひざの上にのせてもらった。
「ねえねえ!あれはなに!?」
「雲だよ」
「くも!」
僕はくもにさわってみたくなって、手を伸ばした。でも、透明な板が硬くてかたくて、とてもくもまで届かない。
「おかあさん!ここからだしてよ!」
「あらあら、飛行機からでてどうするのかしら。」
「雲の上を歩きたい!」
「雲の上を歩いたらどんな感じかしらね。きっと、ふわふわドームみたいに足下がはずむわね」
ふわふわのくもは、すぐそばにあるようにみえる。
「おかあさん!くもにさわりたいよ!」
「くもにさわったらどんなかんじかしらね。わたあめみたいにふわふわかしら」
「いやいや、湯気みたいに熱いかもしれないぞ」
お父さんがそう言ったので、ぼくはくもにさわるのが怖くなった。
さっきもらった新しいおもちゃでおとうさんと遊んでいると、男の人の放送が入った。
「これより、積乱雲に突入します。気流が安定しませんので、揺れにご注意ください」
飛行機が揺れた。
「おかあさん!おとうさん!こわいよう!」
おとうさんが言った。
「まあまあ、ジェットコースターに乗っていると思って。安心しなさい」
「ジェットコースターなんて!遊園地にいっても一度も乗せてくれたことないじゃないか!」
「もう少し大きくなったら乗れるんだって!」
僕は目に涙を精一杯ためた。
外ではゴロゴロと怖い音がして、窓の外も暗くって、とっても恐ろしかった。
「じゃあジェットコースターの練習だ!」
ぼくは、右手でおとうさん、左手でおかあさんの手をしっかり握って、目を閉じた。
「雲のなかを抜けました。間もなく、着陸たいせいに入ります。おてあらいは今のうちにすませていただきますよう、おねがいします」
「よかったね。ジェットコースターおわったよ。」
「ぼくがんばったね!」
「がんばった!がんばった!」
飛行機を降りたあと、僕はおばあちゃんに、飛行機でたくさんがんばった話をしました。おばあちゃんは、とってもよろこんでくれました。
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