天気職人-1

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天気職人-1

僕は天気職人。ミユちゃんの心の中に住んでいる。 気持ちが晴れた日は、心もカラッとは晴れにして、どんよりした日は雲をだす。心が動いたときは、春一番。新しい風を送ってやる。  最近ちょっと困ったことがある。雨が続いて、もう7月も半ばだっていうのに、梅雨のようにどんよりした空模様なんだ。もう1ヶ月もこんな状態で、そろそろお日様が恋しい。ジメジメも飽きたしさ。  それで僕は、ちょいと分厚い雲をどかしてやろうと思った。いつもはミユちゃんの気持ちで天気が変わるけれど、たまには、天気が変わってミユちゃんの気持ちが変わるのもいいんじゃないかと思ったんだ。  僕は雲をどかそうと、息をぴゅーっと吹いてみた。この風この風、つむじ風、つゆ雲どかせよ、どかせ!でもでも、雲は動かない。つぎはお日様をカンカン照りに灯してみた。厚い梅雨雲通り越して、日の光届けよ、届け!でもでも、光は届かない。それから、気圧もちょっといじってみた。高気圧よ梅雨雲どかせ低気圧も梅雨雲どかせ!でもでも、雲は動かない。 ミユちゃんの心のど真ん中に、どしっと座って、動かない。
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