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今日は来るだろうか。明日は来るだろうか……。来ないと思いつつも毎日覗いてしまうポスト。
ほんの僅かな期待を胸に由美絵は今日もポストを覗く。
「あ!!」
なんと、ポストにエアメールがあるではないか。由美絵は大好きな人からのラブレターを受け取るように、大切に、丁寧に、愛おしそうにエアメールを胸に抱いた。そして部屋へ急ぎ『即開封』した。
『おめでとうございます! 貴方は選ばれました!』
懐かしさに涙がこぼれそうだった。紙に印刷された文字を優しく指でなぞる。自分が今1番見たかった文字だ。由美絵は感動に打ち震えた。
『海外の優良株を選ばれた貴方に特別にお教え致します。必ず上がります!』
嘘だと分かっていても、詐欺だと分かっていても、もう手紙の来ない日々は嫌だ。少しだけ、ほんの少しだけ引っかかったふりをして話に乗ってみよう。ほんの1回だけ……。
由美絵はスマホを取り出し手紙に印刷されている電話番号を入力し、通話ボタンを押した。
〈終〉
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