選ばれし者

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 仕事の帰り、家へ入る前にポストを見る。入り切らなかったチラシが投函口から顔を出している。  1か月ポストを確認しないとこの始末だ。なにゆえアパートのポストはこんなにすぐいっぱいになるのだろうか。  由美絵はポストを開け中身を全部出し、部屋へと向かった。  由美絵は社会人になったのを機に独り暮らしを始めた。兄が結婚したからだ。  由美絵の部屋と兄の部屋は薄い壁1枚を隔てて隣同士だったのでちょっとした物音も良く聞こえた。新婚夫婦の会話も聞く気が無くても聞こえて来てしまう。部屋を変えたくても小さな家なので他に部屋も無かった。  「このままじゃ孫がいつになるか分からん。お前は出ていきなさい」と親に言われ由美絵は家を出たのだった。  由美絵は部屋に入ると郵便物を床に投げ出し仕分けを始めた。いや、ポストに入っているからと言って全てが郵便物では無かった。  『新築見学会のご案内』やら『マイホーム相談会』やらのチラシがやたらと入っている。他にはアルバイト募集やレストランの開店チラシもあった。  光熱費のお知らせなどがほんの数通あっただけで殆どが即ゴミ箱行きだった。 「ん?」  1通、エアメールらしき封筒が混ざっていた。しかし日本語で『即開封』と書いてあった。いかにも怪しげである。  どうせDMだろうと思ったが『即開封』が気になった。差出人の表記は無かった。  話の種にはなるだろうと由美絵は即開封した。
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