ストーリー ⑥

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ストーリー ⑥

地区大会当日… 貴子は念入りにストレッチをしている。 お気に入りの曲をイヤホーンで聴きながら、自分が走り始めてゴールするまでのイメージトレーニングに勤しんでいる。 イケメン三人組は貴子に聞こえないように小声で話している。 コージ 「貴子ちゃん、今日の調子はどうかなあ?  脚の痛みが出ないと良いんだけどなあ。」 タロウ 「そうだよなあ、ろくに治療もしないまま練習を続けているみたいだからね。」 シュー 「でも一番心配なのは貴子ちゃんのテンションかもね。  本人は日本新記録を狙っているから、プレッシャーも かなりのモノだと思うしね~。」 貴子は両腕を平手で軽く叩いて 気合いを入れている。 いよいよスタートラインに就く。 貴子 《貴子! 落ち着いて行け! 練習通りにやれば大丈夫! 》 「セット! ……… Peee! 」 貴子は最初の10歩に こだわった! 100メートル走は、ほんの10~13秒の闘いだ。 400、800メートル以上の中距離走とは全く違う…! 呼吸もしない…瞬きさえ… その間は蓄えていたエネルギーを全て出し切る…! 貴子は50メートルを越えて、益々加速をしている! 一人抜き! 二人抜き! 三人目を抜くと…もう前には誰もいない! そこにあるのは、新記録! 大会新、日本新…その先にあるもの! 貴子はゴールラインで最高速度に達した! 三人組 「おっ! やったか! 」 貴子はゴールラインを過ぎて、さらに30メートルくらい ダウンのランニング… そしてウォーキングをしている。 疲労の顔の中にも やり切った安堵の表情が覗く…。 貴子の記録が出た! 「〇〇〇タカコ…11秒21! 大会新記録! そして日本新記録タイ! 」 観客席から どよめき と 歓声が上がった! 「タカコ! 良いぞ! やったな! ワーワー! 」 「タカコさん、凄い! 凄すぎる! 」 「タカコちゃん、良かったよ~!  最高! 最高だあ! 」 歓声の鳴り止まない中、貴子は観客席に手を振って挨拶をしている。 貴子 《 やったあ! 日本新記録タイだあ! 》
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