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昏睡(グエン視点)
アレンが倒れたと聞いて慌てて駆けつけたら兄上がいて、直ぐにアレンに会わせてくれた。アレンは真っ青な顔をして、ぐったりと点滴に繋がれて眠っていた。
「どうして倒れた?!体調が安定していないせいか?」
「いや、それもあるが、精神的ショックを受けて変調したようだ」
「ショックってーー何があったんですか!」
「将軍に呼ばれたアレンは、隣国の皇子からの求婚を伝えられ、拒絶反応で倒れたらしい。分化中のΩの精神は非常に不安定だし、皇子となると断れないからな」
「あの糞野郎っっ!」
「アレンが意識を取り戻しても、この話題に触れたらまた倒れかねん。お前も分化完了まで待たずに、さっさと番にしてしまえ。アレンのためにも」
「あぁ、そのつもりだ」
しかし、アレンはその後何日も意識が戻らなかった。アレンの家族もショックを受け、俺以外からの求婚は例え身分が高くても受け付けないと約束してくれた。隣国の皇子も、経過を聞いて謝罪してくれた。将軍に至っては、関係者の前で土下座して謝った。それでも、アレンをこのようにしてしまった罪は許せない、けどーー
見舞いに付き添い、仕事以外では寝る時も常に側に居続けること1ヶ月過ぎ、
「あっーーあああああっっ!嫌だ嫌だ嫌だ!!!」
「アレン!大丈夫だ!落ち着けっ…なっ。俺だ!」
深夜に意識を取り戻したアレンが錯乱状態になって叫びだした。目はカッと見開かれ、涙を流しながら大声を上げ、身体をガクガク震わせている姿はーー日頃のんびり元気な姿とのギャップも凄まじく、見ていられなかった。慌てて抱きしめ、俺を認識させるべく声をかけ続けると、
「グエン、ごめんー僕ー結婚出来ないって」
「大丈夫だから!」
「死にたい、嫌だイヤだいやっ!!!」
俺の声が聞こえていないのか、身体を振りほどき打ち付けようとするから、
「誰か!医者を!」
直ぐに来た兄上達医者が鎮静剤を打ち、アレンを眠らせた。家族も直ぐに駆けつけた。
「このままでは、危険ですね」
「カウンセリングが必要だな」
「起きたら錯乱して自殺しかねない。夢の中に入ってカウンセリングしましょう」
「グエン出来るか?かなり繊細な魔術だが、お前じゃないと多分アレンはこのままだ」
「やります!誘導は兄上にお願いしても?」
「勿論だ。もう問題ないよと安心させてやれ」
意識がない間に痩せ細り、元々繊細な美貌だったのが、陰を含んで益々深みを増し、そのまま天国へ召されるのではと不安になる儚さを持って、アレンは眠っていた。涙を流しながら。
あの、のんびりとしていて大食いで、元気一杯のアレンが早く見たいーーそう思いつつもグエンはーー心の底でほの暗い喜びが湧きあがるのを自覚していた。
これ程までにアレンに愛されている!
他のαとの婚姻話で昏睡するほど拒絶してまで俺を!
この狂った独占欲は、アレンに知られてはいけないと思いながらーー
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