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夢の世界(グエン視点)
アレンのベッドを囲んで、魔力の高い4人が魔方陣を作成している。
構成は俺、兄上、アレンの兄上、そしてソフィーナ姫だ。アレンの兄上は急遽、竜の国から帰国してもらった。アレンの兄上はこの国の歴史上1番の魔力を誇っているのだが、竜神と恋に落ち、竜の国へ行ってしまったのだ。アレンの両親は、後継ぎは俺とアレンの子か、竜神との子を、どちらか1人養子にくれたら良いと、息子をとめなかった。アレンの両親らしい暢気さだ。
アレンの兄上は、変わり果てたアレンの様子を知るや、隣国の皇居に特大の雷を落としたそうだが、皇居の中は大丈夫だったのだろうか?
魔方陣が完成したから、俺はアレンの横に並んで寝転び、目を閉じた。これからアレンの夢の中に入るのだ。
「いいか。強い刺激を与えたらダメだぞ。2人共に眠ったまま、戻れなくなるからな」
「気を付ける。やってくれ」
ーーもし失敗したらもう2度とこの愛しい顔を見ることは叶わないーー
俺はアレンを瞬きを忘れるほど見つめた後、そう言った。
待っていてくれアレン、すぐ連れ戻すからな!
俺が目を開けると、家の庭が広がっていた。よく幼い頃、アレンや兄上達とばか騒ぎしては、家の者に怒られた思い出深い場所だ。アレンは庭の隠れたところに秘密基地を作って、かくれんぼのときや怒られた時、よくそこに隠れていたのを思い出した。
行ってみると案の定、幼いアレンがそこで小さくなって泣いていた。
ひっくーーひっ、グエン~ひっ
しゃくり上げて泣いているアレンの元にそっと近づき、
「何だ?泣いているのか?」
そっと声をかけてみた。大人の俺を見つけたのに疑問に思わないのか、アレンが
「お前と離れて遠くに連れて行かれる夢を見たんだっ」
「ここにいるじゃないか」
「もうすぐ連れて行かれるんだ!」
また泣きだしたアレンを、刺激しないようそっと抱きしめた。
「ならば俺もついて行くから心配ない」
「本当に?一緒?」
「当たり前だろ?ずっと一緒だ!今までも、これからも」
「本当に本当に??離れない?」
「あぁ、離れてくれと言っても離してやらん。一生」
「そっか」
涙が止まり、嬉しそうに笑うアレンを見て、
「さぁ、起きるぞ」
「え?寝てないよ?」
「寝てるんだな、これが。俺もお前も」
「何だか変なグエン!でも起きようかな?」
「あぁ、待ってる」
幼いアイツがやわらかい笑みを浮かべたのを確認し、ゆっくり目を開けてみた。
「おはよう、アレン」
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