職場への報告

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職場への報告

 1週間の発情期休暇を終えてグエンが先に職場に戻り、その後に僕も職場に復帰する事になった。番を得たので他のαにも影響を与えないし、僕の身の危険も無いからだ。とはいえ多分妊娠しているので、訓練等は免除でデスクワーク三昧になる予定。初めての子供が流産しない様に。  職場に着くと、グエンが迎えに来てくれて、一緒に上司の部屋へ向かったのだが、 「何だか静かだね。今日。何かあったの?」 「静かなのはお前を見たからだ」 「え?何で?」 「周りをよく見てみろ。アイツ等の顔を」 少しイライラしている感じのグエンの言葉に、不思議に思いつつ周りをちら見すると、ほわ~んと上気した顔が沢山いる。僕を見ている様だが、視線が何だかおかしい。 「熱風邪でも流行ってる?」 「アホ」 「何だよアホって!皆何だかほわ~としてるから」 「お前を見たからだろ」 「だから何で?」 「お前に見とれてるんだよ!(怒)」  何で見慣れている僕に今さら見とれるんだよ! 異次元胃袋とか、残念属性とか、能天気とか……皆好き勝手僕に言っていたのに、暫く休んで戻ってきただけで見とれるなんて、ないない。中身知ってるから絶対ないない。 「ないない~」 「無自覚ド天然」  何だか納得いかないが、上司の部屋に到着したのでノックして入室した。 「今日から復帰します。長い間ご迷惑をお掛けしました」 すると上司からの返事がない。 ??? ……ッ! 我に返った上司が、僕の顔を見ながら 「……本当に変わったな!守護神が降臨したのかと思って固まってしまった……」 「え?」 「言ってやって下さいよ。俺が言っても全く信じてくれないんです」 グエンが文句を言うので、 「当たり前だろ!見とれるって?……(小声)」 「そりゃお前、これだけ変化しといて。印象が全く変わったぞ。蝶が羽化したと言うかーー脱皮?」 「Ωですけど人類なので脱皮はしません!」  グエンだけじゃなく、上司からも変わったと言われてやっと、自分の変化を認めた。渋々だけど。僕は何も変わっていないつもりなのだが、羽化?したらしい。  もしかして、ドエロい発情期を過ごしたせいで、色気がにじみ出ているのだろうか。やはり普通には戻らなかったのか?  グエンはいつも通り、いや。前より落ち着いて、大人の貫禄が出て、益々男振りが上がったというのに。 不公平だ!  終いには僕を拝みそうな上司に挨拶して、部屋を出た。次は訓練場、その次は魔法省に顔を出さなければいけないのだが、今から憂鬱だ。 「なぁ、我が国の守護神って、水の神アクア様だろ。アクア様って……女神じゃ……」 「そっくりだぞ」 「まさかぁ~?そりゃ胸はササヤカナ女神サマだけど、僕の体型で女神はないっしょ!胸ペローんだよ、腰の括れもささやかだよ。寸胴だよ」 「銀の髪、青い瞳、優しく慈愛溢れる美貌、たおやかな物腰、優しくも包容力があり海の如く包み込まれそうな雰囲気」 「って、誰だよそれ」 「今のお前」 思わず顔が真っ赤になった。新婚だからって、誉めすぎだろ。じゃ、じゃあ…… 「それなら番う前の僕はどうだったんだよ?」 「ガサツで大食い……って、大食いは今もか!あと、可愛いけどおっかない、ド天然……って、これも今もか。あとお子様」 「誉め言葉が可愛いしかない!?」 「やっぱり人妻の色気が女神たらしめてるんだろうなぁ~あと妊婦?だから余計に」 「期間限定かよ」 「大丈夫!これから長く女神のままだ」 「おいっ!何人仕込む気だ?!」 「10人くらいは」 「無理だよ!」  将来の身の危険を感じつつ、訓練場に向かった。訓練の声が大きくなり、皆の姿がはっきり見えだした頃徐々に声が途切れて、着いた時には無音になった。  あっと思い、 「ご迷惑をお掛けしました!本日より復帰します!」 声を上げたら無音がザワザワになり、ザワザワが叫びになった。 「神よ!!(拝)」 ……変わらないなぁ~皆してアホなところが。 「ただのアレンです。これから暫くデスクワークのみですが、宜しくお願いします」 「え?戦闘出ないの?」 「はい。出産して落ち着くまでは」 「落ち着く暇なく妊娠させるので、もう戦闘参加はないです」 「なっ!何て事言うんだ!皆の前だぞ!」  恥ずかしい~何言ってるの!ヤりまくり宣言みたいじやないか…… 「はいアツいアツい。新婚さんはいいね。腰大丈夫?」 「昨晩もオタノシミでしたね」   つっっーグエンのバカ!アホ!巨根!性欲魔神! 心の中で文句垂れつつ、僕は頭を下げてから魔法省に向かった。グエンを伴って。
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