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「気が変わったら何時でも来い。待ってるからな」
「待たなくて良いです!失礼します!」
僕が立ち去ろうとすると、
「グエンちょっと」
グエンはまだ用事がある様なので、僕だけ先に帰ることにした。
「もうそろそろ分化しそうじゃないか?」
「兆候はありますね」
「様子は?ヤってるんだろお前達」
「まぁ」
兄上が聞いてきた。兄上がアレンに求婚してるのが冗談なのは、アレンも周りも知っている。兄上にはこの国の第3皇女という、幼なじみにして婚約者がいる。しかも相愛なのだが、結婚しない理由は仕事が忙しいのと、
「兄弟で何のこそこそ話かしら?」
ガタッ
兄上がビビって逃げかけるのを
「待ちなさい!何のお話か聞かせてくれないかしら?私達の間に秘密は無しよ」
ガシッと捕まえて元の席に座らせ、自分は向かいのソファーに座った、未来の義姉ー通称「紅蓮姫」ーが、ただ怖いだけだ。
「ソフィー、アレンの未分化について話していただけだよ」
「あら?とうとう女の子に?凄い美女になるでしょうね~グエンおめでとう」
「いや、未だなんだ。兆候はあるのだが、様子がおかしいんだ」
確かに兆候はある。よくぼーっとしているのは通常なのだが、それ以上に上気した感じが頻繁になり、しかも先日、出血があった。本人は隠せたと思っている様だが、バレバレだ。洗濯物に血の跡を見付けた時には問いただそうと思ったのだが、本人が言うまで黙っておこうと思っていた。しかし、
「分化が中途半端なんだ。胸もそのままだし」
「貧乳なだけでは?」
「違うと思う。あいつの家系的に」
「爆乳の家系だものね、あそこの家」
しかも、女性になっていくにつれ体つきが柔らかくなるはずなのに、アイツはそのままだ。しかし色気は凄まじいものになってきていて、見慣れている俺でも時々ふら~っとしてしまう。
「少し調べてみよう。今度アレンを呼んで一緒に来てくれ」
「分かった」
兄上は医術も極めているので安心だ。婚約者もいるので、アレンの身体を見てフラフラすることもない。
「もしかして、Ωかも知れない」
「Ωだって?希少種じゃないか!しかしアレンならもしや」
「特徴としてはーユニセックスな外見と美貌。優秀な子を生む確率が高いそうだ。皇族に嫁ぐことが多いから、情報規制されていて詳細はいまいちだが」
「では母上に聞いてみますね」
「助かる!」
ここ最近、アレンは悩んでいるようだ。分化しきらない身体、俺との関係。仕事が好きなアイツにとって女性化は辛いだろうが、俺の嫁になるのは問題ないはず。身分の差を気にしている様子もあるが、次男だから其ほど深刻ではない。やはり分化しきらない事に不安があるのだろう。
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