月のしずく

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真夜中、部屋でひとり、ラジオを聞いていた。パーソナリティーはすごく真っ当な意見を言い、アシスタントの女性はそうですねと、相槌を打つ。 途中でアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「ブギー・ワンダーランド」がかかって、俺は曲の途中で家を出た。 住宅街の歩き慣れた、迷路のような細い薄暗い路地を早足で歩く。どこかに向かって歩いているのではなかった。ただ足が踏みだす方へ歩いていた。 暑くなって途中着ていたTシャツを脱いだ。流れた汗が胸や腕で鈍く光る。 数年前に卒業した小学校についた。フェンスのむこうにTシャツを投げて、俺もフェンスによじのぼって、校庭の中に入った。 金網で引っ掛けたのか、左腕から血が滲んでいる。舐めてみた。鉄の味がする。ヘモグロビンがどうのと、学校で習ったこと思い出した。 小学校の時に、粘土の団子を作った築山に登った。みんなでどれだけピカピカにできるか競った。けっこうピカピカになるのだけれど、必死で磨いているうちに、割れてしまうのだ。
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