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かなり力んで疲れたのか、イーサは指を土から離して、その場にどてっと腰を下ろした。だが、地面は指を差し込んだ不揃いな小さな丸い穴が5つ開いているだけで、どんなに頭の中で芽が出る想像をしても、地面は微動だにしなかった。
「グランマ。僕才能ないみたい」
涙目で見上げる孫に思わず笑いを漏らしたハンナは、小さく首を振った。
「まだあなたは8歳だから、これから開花するのかもしれないわ。諦めないで。お手本を見せるから見ていて」
そういうと、ハンナはイーサンが土の上につけた指跡に手をかざして、目をつむった。イーサンはハンナの顔から急いで土の上にと視線を戻すと、ハンナの指先がまるで光っているように輪郭がおぼろげに見える。
手の影になった土の表面がもごもごと動き出し、穴がだんだん盛り上がって平らになったかと思うと、そこからペールグリーンの小さな芽がのぞいた。
あっと息を飲んだイーサンが、驚きのあまり息をするのを忘れている間にも、白い茎は色づいて緑になり、ハンナがかざした手を上げるに連れてどんどん成長し、やがて変わった花がそれぞれの穴から伸びた茎に咲いた。
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