60人が本棚に入れています
本棚に追加
観音開きで、ㇵの字型に外に向かって開かれた窓枠に停まり、ルナが用心ぶかく中を覗き込むと、リビングらしい部屋のカーペットの上に、男がうつ伏せで眠っているのを発見した。
コンコンと一応くちばしで窓ガラスをノックしてみたが、男が起きる気配はない。
どうやら5月の爽やかな空気を入れるために窓を開け放ち、あまりの気持ちよさに熟睡してしまったようだ。
不用心という言葉が一瞬頭を掠めたけれど、こんな山奥の一軒家に入る空き巣は、そうそういないだろうと思い直し、ルナは窓から飛んで入り、男が寝ているすぐ横のティーテーブルに降り立った。
部屋には異臭が漂っていて、思わずルナは顔をしかめたが、この匂いを追い出すために空気を入れ替えていたのかもしれない。
部屋の床全体に敷かれたクラシカルな模様の赤い絨毯は、所々色がまだらになっていて、あまり裕福な暮らしをしているようには見えなかった。
だが、安くはない代金は先払いで振り込まれているので、単なる節約をしているだけかもしれないとルナは思った。
(さて、お部屋の観察なんてしてる場合じゃないわ。ここまで来るのにずいぶん時間がくっちゃったから、とっとと仕事を済ませて、暗くなるまえに帰らないと、カミラが心配しちゃう)
最初のコメントを投稿しよう!