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イーサンは、ハンナの不思議な力を目の当たりにしてから、植物に興味を持ち、大学でもその方面を選んだ。
卒業後院に進み、わずか1年で単位を取って、植物研究センターで研究者として2年働いている。
そこでは、植物を研究してエネルギーに変換したり、交配によって環境の悪いところで育つ食物を作り出したり、土を使わず育てるノウハウを探ったりする。
普通は、いくら精霊の末裔だからと言っても、精霊の印の無い者が力を発揮することはなく、他の人間より少し植物を育てるのが上手いくらいで済んでしまうのだが、イーサンは印が無いにも関わらず、植物の生命力を感じることができた。
植物の医者が幹に耳を当てて、樹液の流れを感じ取るように、植物に触れるだけで、弱ったものたちを元気づけることができるので、イーサンは植物センターでは重宝されていた。
イーサンは朝食を食べ終えると、シャツとパンツに着替え、まだ5月の気候で朝晩ひんやりするのに備えてジャケットを羽織った。植物センターにつけば、白衣の下に着ているものがほぼ隠れるので、25歳といえども平日はしゃれっ気のない恰好だ。
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