Side:Tsugumi***

4/6
前へ
/21ページ
次へ
全ての授業が終わったあと、いったん自分の家に戻って、シャワーを浴びてお泊まりの準備をした。 メイク直しはいつもよりも念入りに。ドキドキしすぎて、アイラインが少しブレてしまった。佳祐相手なのに。……いや、佳祐相手だから(・・・)。好きな人に会いに行くから、こんなに緊張してるんだ、わたし。 佳祐の家に着いて、何をするでもなくスマホをいじっていると、午後11時30分を過ぎたころにインターホンが鳴った。バイトを上がって、本当にすぐ帰ってきたらしい。 「……おかえり。バイトお疲れさま」 「うん、ただいま」 わたしが玄関のドアを開けると、佳祐はすごく嬉しそうに笑って、靴も脱がないままわたしにぎゅうっと抱きついてきた。 「もう、苦しいってば。靴脱ぎなよ」 「うん。……帰ってきたらつぐみが待ってるの、やばいな。嬉しすぎる」 わたしの肩に顔を埋めて耳元でそんなことを言うから、ドキドキが加速してしまう。 「つぐみ、キスしていい?」 そう訊いたくせにわたしが返事をする前に、軽くキスをされる。唇を離した途端に目が合って、思わずお互いに笑ってしまった。 * ベッドに座ってスマホをいじっていると、シャワーを終えた佳祐が、上半身裸で濡れた髪をバスタオルで拭きながら隣に座ってきた。スウェットのズボンだけを履いた状態だ。 ギシッ、という音に過剰に反応してしまう。ていうか、早く服着てよ。わたしは思わず目を逸らす。 「……あの、今日は、ありがとう」 「ん、こちらこそ」 佳祐はタバコに火をつけ、ゆっくりと吸って、煙を吐き出した。その一連の仕草が男っぽくて、密かに見蕩れてしまう。友達のときは知らなかったけど、佳祐ってこんなにかっこよかったんだ──なんて。 「こちらこそ、って?」 「彼氏って認めてくれて」 佳祐はわたしに向けて悪戯っぽく笑って言った。恥ずかしくなって言葉に詰まってしまったけど、なんとか「そんなの、当然でしょ」と小さな声で絞り出した。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1806人が本棚に入れています
本棚に追加