1806人が本棚に入れています
本棚に追加
全ての授業が終わったあと、いったん自分の家に戻って、シャワーを浴びてお泊まりの準備をした。
メイク直しはいつもよりも念入りに。ドキドキしすぎて、アイラインが少しブレてしまった。佳祐相手なのに。……いや、佳祐相手だから。好きな人に会いに行くから、こんなに緊張してるんだ、わたし。
佳祐の家に着いて、何をするでもなくスマホをいじっていると、午後11時30分を過ぎたころにインターホンが鳴った。バイトを上がって、本当にすぐ帰ってきたらしい。
「……おかえり。バイトお疲れさま」
「うん、ただいま」
わたしが玄関のドアを開けると、佳祐はすごく嬉しそうに笑って、靴も脱がないままわたしにぎゅうっと抱きついてきた。
「もう、苦しいってば。靴脱ぎなよ」
「うん。……帰ってきたらつぐみが待ってるの、やばいな。嬉しすぎる」
わたしの肩に顔を埋めて耳元でそんなことを言うから、ドキドキが加速してしまう。
「つぐみ、キスしていい?」
そう訊いたくせにわたしが返事をする前に、軽くキスをされる。唇を離した途端に目が合って、思わずお互いに笑ってしまった。
*
ベッドに座ってスマホをいじっていると、シャワーを終えた佳祐が、上半身裸で濡れた髪をバスタオルで拭きながら隣に座ってきた。スウェットのズボンだけを履いた状態だ。
ギシッ、という音に過剰に反応してしまう。ていうか、早く服着てよ。わたしは思わず目を逸らす。
「……あの、今日は、ありがとう」
「ん、こちらこそ」
佳祐はタバコに火をつけ、ゆっくりと吸って、煙を吐き出した。その一連の仕草が男っぽくて、密かに見蕩れてしまう。友達のときは知らなかったけど、佳祐ってこんなにかっこよかったんだ──なんて。
「こちらこそ、って?」
「彼氏って認めてくれて」
佳祐はわたしに向けて悪戯っぽく笑って言った。恥ずかしくなって言葉に詰まってしまったけど、なんとか「そんなの、当然でしょ」と小さな声で絞り出した。
最初のコメントを投稿しよう!