1808人が本棚に入れています
本棚に追加
「……佳祐、あのね」
──頑張れ、わたし。これを言うために来たんでしょ。
膝の上でぎゅっと拳を握って、自分で自分を奮い立たせながら深呼吸した。顔が熱くて、酔っているわけでもないのにふらふらと目眩がする。
「あのね、わたし、佳祐のこと、好き、だからね」
静かな部屋の中にわたしの上擦った声だけが響いて、時間が止まったような気がした。
何秒間かお互いに黙ったあと、佳祐の「あっ、やべ」という声で我に返る。
場の空気をまるで読んでいない声に非難の目線を送ると、佳祐は咥えたままのタバコを危うく落としそうになっていた。
「その……いろいろ、ごめんね。どうしていいかわからなかったの。突然、友達から彼女になって。ああいうふうになって、恥ずかしかったけど、嬉しくて」
「……うん」
「佳祐が好きだって、ちゃんと確信したから。遅くなってごめんね」
「……うん」
「ねえ、ちゃんと聞いてる?」
人の一世一代の告白を、まさか聞き流していないよね?
疑いの目を隣に向けると、なんと佳祐は耳まで真っ赤になっていて、信じられないというふうに口元を手で押さえていた。
「……佳祐?」
「ごめん、つぐみが俺の欲しい言葉ばかり言ってくれるから、夢じゃないよなって」
やべえ、ほんとに信じられない。佳祐はそう言ってタバコを灰皿に押し付けると、わたしをぎゅっと抱きしめた。
「つぐみ、これからはずっと、俺のことだけ見てて」
佳祐はわたしの髪を優しく撫で、頬に柔らかなキスをしてくれる。
「俺はつぐみのことしか見てない。だからつぐみも、俺のことしか見ないで?」
身体が少し離れたかと思うと、次は唇に。触れるだけのキスの後に真剣な眼差しで見つめられて、至近距離で目が合う。
──あ、わたし、本当にこの人のことが好きだ。
直感でそう思う。ずっと近くにいた「親友」──いつの間にかそんな関係を飛び越えていたのは、佳祐だけじゃなくてわたしも同じだったのかもしれない。
「そんなの……もう、そうなってるよ」
わたしは自分の気持ちを抑えきれず、今度は自分から佳祐にぎゅっと抱きついた。
最初のコメントを投稿しよう!