Side:Keisuke

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Side:Keisuke

なんなんだよ、もう。 つぐみが怒って帰ってしまって夜の繁華街に取り残された俺は、そのまま帰るのも(しゃく)なので一人寂しく二次会をしていた。 何度か一人で訪れたこともあるバー。適度な喧騒と暗めの照明が、俺の心をいくらか落ち着けてくれる。 それにしても、勝手に会計したのがそんなにまずかったのだろうか。 確かにつぐみとは、今までは何食うんでもほぼワリカンだった。でも、彼氏が彼女に奢るのって普通のことじゃないのか。少なくとも、俺が今まで付き合ってきた子にはできるだけそうしてきた。 「ありがとう」って言ってほしかっただけなのに、まさか怒られるとは。 「まあ、一筋縄じゃいかないってわかってはいたけど」 思わずぽろりと独り言が出てしまう。友達としての期間が長かった分、あいつの素直じゃないところや頑固なところは知っているつもりだ。 そこも引っくるめて好きになって、手に入れたつもり、だったのだが。 数日前の夜を思い出す。つぐみは、セックスのときですら素直じゃなかった。表情や声色に全部出ているのに、言葉では「気持ちいい」なんて絶対に言わなくて。 そこがまた可愛くて虐めたくなるんだけど──俺もつくづく変わった趣味してるよな。 「お兄さん、ひとり?よかったら一緒に飲みませんか?」 ふと背後から声を掛けられる。振り向くと、綺麗めのお姉さんが二人、にこやかに立っていた。 美人だなと思いつつ、たった一人の女すら扱い切れてないのに二人も相手できるかよと、「いえ、もう帰るんで」と席を立った。 ──見ろよつぐみ、俺って結構モテるんだぞ。お前は知らないだろうけど。 バーを出て地下鉄の駅までのろのろと歩きながら、そんなことを考える。 まあ結局、俺はあいつが好きだから、他の女なんて眼中にないんだけど。 惚れた弱みってやつだよなあ。適度な酔いのせいもあってなんだか可笑しくなってしまい、全く鳴らないスマホを手に、ふっと笑いがこぼれた。
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