彼からの手紙

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浩一郎が物書きしている姿を傍で見ていた。 研ぎ澄まされた浩一郎の集中力は恐ろしいもので、食事を持ってきても時間を惜しむ様に、集中力が切れるまで書き続けていた――にも関わらず、浩一郎は体の弱い人であり、気づけば体を壊して寝込む事もしばしばあって。けれどもこちらの声に聞く耳すら持たず、壊れた体で――物書きをし続けていた。 そんな浩一郎が亡くなったのは去年の夏であった。 その日はひどく気温が上がり、熱にあてられたかのように、浩一郎は変わらず物書きに励んだ。 ――だけど突然。 浩一郎は意識をなくし、別れの挨拶もしないまま、天にへと旅立ってしまった。 これは後に知った話。 浩一郎は心臓病を患っていたらしい。亡くなった原因はそれだと、医者から告げられた。 その時は何も知らない自分が情けなく思え、涙が枯れる程に泣いて、泣いて、泣いた……。
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