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4.
「乾杯!」の声に合わせ。
ホテルの宴会場で、グラスが鳴る。
「最初聞いた時は耳を疑ったよ。なにはともあれ、結婚おめでとう」
「そうですよぉ、ずっと猫ちゃん一筋だったのにぃ。猫ちゃんが理由でフラれた子、周りにいっぱいいるんですからねー。おめでとうございますぅ」
着飾った友人知人が、口々に寄って来る。
真白な高砂は、色取り取りの花弁が揺れている場に移り変わる。
「新婦さん。新生活に向けて一言どうぞ」
ビデオカメラに向かい。
隣に居る純白の女性が、満開の笑顔を花開かせる。
「名前の呼び間違いを、そろそろ止めて欲しいでーす。
この人、気を抜くとすぐに『サヤ』って呼ぶから。妻の名前を間違える夫なんて、この人ぐらいしかいないと思ってまーす」
「以上、新婦さんからでした。新郎さん。新郎さんからも、一言お願いします」
「呼び間違いに関しては、全部僕の責任です。サヤ……じゃない、サヤカにこれ以上怒られる前に、頑張ります」
「またサヤって呼んだー! サヤカサヤカサヤカって、寝ている時に唱えてやるからね!」
ドッと、湧き上がる笑い声。
僕も照れ隠しで、頬を掻く。
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