4.

1/2
前へ
/17ページ
次へ

4.

「乾杯!」の声に合わせ。  ホテルの宴会場で、グラスが鳴る。 「最初聞いた時は耳を疑ったよ。なにはともあれ、結婚おめでとう」 「そうですよぉ、ずっと猫ちゃん一筋だったのにぃ。猫ちゃんが理由でフラれた子、周りにいっぱいいるんですからねー。おめでとうございますぅ」    着飾った友人知人が、口々に寄って来る。  真白な高砂(たかさご)は、色取り取りの花弁が揺れている場に移り変わる。 「新婦さん。新生活に向けて一言どうぞ」  ビデオカメラに向かい。  隣に居る純白の女性が、満開の笑顔を花開かせる。   「名前の呼び間違いを、そろそろ止めて欲しいでーす。  この人、気を抜くとすぐに『サヤ』って呼ぶから。妻の名前を間違える夫なんて、この人ぐらいしかいないと思ってまーす」 「以上、新婦さんからでした。新郎さん。新郎さんからも、一言お願いします」 「呼び間違いに関しては、全部僕の責任です。サヤ……じゃない、サヤカにこれ以上怒られる前に、頑張ります」 「またサヤって呼んだー! サヤカサヤカサヤカって、寝ている時に(とな)えてやるからね!」  ドッと、湧き上がる笑い声。  僕も照れ隠しで、頬を掻く。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加