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この難病を治す方法はこの世にはない。しかも病気になった時に共に闘うはずの免疫細胞たちが今回の敵だ。いわゆる孤立無援。
「許せない」
私の免疫細胞たちがいつも最大の力を発揮できるように、大敵であるストレスを取り除く努力を続けてきたというのに。
面倒な要求をしてきて私をイライラさせる恋人とは別れ、理不尽な圧力をかけてくる上司がいる職場はすぐに転職してきた。私は免疫細胞たちとベストな仕事をするために、こんなにもストレス因子を排除して生活環境を整えてきたのに、この仕打ちは何?
「復讐してやる」
奴らを抹殺するためには私も死ぬしかないのか?勝負はつけられないのか?
他に方法は無いのか?この心身を支配しているのは私だ。私を攻撃している免疫細胞以外の細胞たちは、私のために闘う意志はあるのか?闘わせるかどうかを決定するのは支配者である私だ。ならば闘わせる。反乱を起こした細胞たちを健全な細胞たちが喰い尽くすイメージ。私は怒りに怒った。
1週間後の血液検査の結果を知らされた。薬物療法と怒りのイメージの反撃で敵の攻撃力は落ちたが、怒りの強さは新たな大きなストレス因子となって、味方の細胞もかなりのダメージを受けていた。戦法に誤りがあったと分析した。
ステロイドの副作用による不眠とうつ状態も始まっている。1日だけ外泊許可をもらった。これ以上うつ状態が悪化すれば、闘う気力は出せなくなる。明日からの闘い方の方向性を決めておきたかった。自分が自分でなくなる前に。
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