生きたい

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「共に闘う細胞たちを再生させたい。ねえ、私の心と身体、復活しようよ!」 雲が流れて、縁側で寝ている私を見下ろす満月と目が合った。電気が止められている宮田さんの部屋が月の光で明るい。 月から私に向かって降り注ぐ白く光る無数の粒子たち。 柔らかいシャワーを浴びるように降り注ぐ月の粒子たちは、私の全身の皮膚をすり抜けて入ってくる。体内に入ってもなお白く光る粒子たちは、細胞が死滅した跡の隙間に充填され、血流に乗っては赤と白の光の帯となって、枯れかけた臓器たちを揺さぶり起こして回る。脳の中では月の粒子とシナプスが結合して、銀色の閃光をいくつも放ち、眼球が満月と同じ色になった。 再びの深い闇の後、宮田さんの部屋を明るくしたのは、昇ってきた太陽だった。 宮田さんは起き上がって蒸しパンを食べ始めた。 「宮田さん、おはようございます」 「なんで私を知ってるの?」 「さくら薬局の薬剤師です」 「ああ、あそこの人」 宮田さんは他人が寝ていたことに疑問は抱かず、再び蒸しパンを食べる。 宮田さんの家を出ると、私の再起を祝福するかのように朝の陽射しが眩しい。 病院までの道を時々走った。ずっと走り続けられたけれど、このまま加速すると宙に浮きそうな気がして加減をした。 今日、血液検査を受けても最悪な数値が出るだろう。でも足りない細胞は月の粒子が補ってくれている。その効力があるうちに、私は他者を慈しみ、他者と共に悩み働く人になっていこう。 その努力と奮闘を、この身体が喜んでくれて、本物の細胞を再生してくれると信じて、私は疑わない。 【完】
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