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それは小雨が降る日のことだった。
小学校4年生の小川瑠実は、1階の窓辺に設置された机に向かって学校の宿題を片付けていたが、窓の外に何か動くものを目の端にとらえた。
ぱっと顔を上げて庭を見ると、瑠実より1学年上の三崎俊哉が立っていて、ぴくりと身体を震わせた。
俊哉は、瑠実の家の北側にある道を挟んだ斜め向かいに、両親と2歳年下の妹の沙也加と住んでいる甘目のマスクをした男の子だ。
瑠実の家は敷地が広く、北の門と言っても植木だが、そこから10mほど入った奥に家がある。一人っ子の瑠実が結婚した時に、北側に新居を建てられるように両親が購入した土地だが、瑠実の家を初めて訪れる人は、敷地の中に入っていいのかどうか迷うようだ。
だが、瑠実の友人たちは、子供という特権を活かして平気で中に入ってきて、1階の北西の瑠実の部屋の窓に向かって遊ぼと声をかけたりする。
だから、瑠実は俊哉も遊びに誘いに来たのかと思い、椅子から立ち上がって窓に向き直った。
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