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ところが、俊哉は少しムッとしたような顔をして、手に持っていた何かを窓に投げつけてきた。反射的に身をかがめた瑠実だが、窓に当たるかと思われたそれは、途中でふわりと翻り、窓のすぐ下に落下した。
何が落ちたのかと、瑠実がそれに気を取られている間に、俊哉は走って庭を抜けていき、瑠実が目にしたのは、道路に走り出る雨に濡れた小さな背中だった。
一体に何をぶつけてきたのだろうと、腹立たしく思いながら、瑠実は小雨の中を外に出て、窓の下に落ちている折りたたまれた紙を拾った。
すぐに家に駆けこんで部屋に戻ると、ハンカチで濡れてしまった紙を拭きいてから紙を開いてみる。
中には、あまり上手いとは言えないけれど、男の子らしいしっかりと力強い文字が書かれていた。
るみちゃんは何色が好きですか?
僕はみどり色が好きです。
るみちゃんはどんな天気が好きですか?
僕は雨の日が好きです。
だって、雨の日に他の子たちは外に出ないから、
るみちゃんを一人で見られるチャンスだからです。
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