Erased Dark Green

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 気が付くと、枕元にモーリス・ドリュオンという作者が書いた「みどりのゆび」というタイトルの本があった。  仕事を早退して駆けつけた母が、三崎俊哉と妹の沙也加がお母さんと一緒にお見舞いに来てくれたことを教えてくれた。 「起こしてくれたら良かったのに」 「起こしたけれど、ぐっすり眠っていて目を覚まさなかったのよ。その本は俊哉君からよ。心配して、色々質問されたけれど、治るから安心してと言ったら、枕元でじっと瑠実の顔を見ていたわ」  寝顔を見られるなんてと今更ながら瑠実は焦ってしまった。寝相は悪くなかっただろうか?布団は跳ねていなかっただろうか?腰のギプスの下は何もつけていないから、見られていたらどうしよう……。  布団を上げて、前開きの室内着から剥きだしの下半身が出ているのを見て、頭に血が上った。  どうか見られていませんように……・  気持ちを落ち着かせようと、枕元の本を手にとって読み始めた。  チトという男の子が、指先に秘めた特殊能力を使い、植物の種を発芽させて、あちこちに花をさかせながら、すこしずつ世界を変えていくお話で、瑠実はその世界に引き込まれ、夢中になって読んだ。  あり得ないところに花が咲くことで、普通の世界だけでなく、歪んだ世界に閉じ込められた人々でさえ、ルールや罰で支配するよりも、どれだけ心を動かされるかという社会に問いかけるような内容で、瑠実はすごく良い話だと感じて、その本が大好きになった。
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