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タイトルの「みどりのゆび」を見ていたら、俊哉の文字が頭の中に浮かんできた。
『るみちゃんは何色が好きですか?
僕はみどり色が好きです』
本の中には、チトが病院の中にも花を咲かせ、病気の女の子を笑顔にするシーンもある。
普段は目も合わせようとしない俊哉の気持ちが、優しいみどりに包まれた励ましとなって、瑠実の心にも流れこんでくるように思えた。
その後、瑠実はリハビリをして、痩せた筋肉を増強して歩けるようになり、日常生活へと戻っていった。
本のお礼を言おうと思って俊哉の家を訪ねたら、玄関に出てきた俊哉は、相変わらず不愛想だったけれど、耳だけが真っ赤に染まっているのを見て、瑠実は俊哉の態度は照れなのだということが分かった。
その途端に、自分の耳まで熱を持つのを感じて、お礼だけ言うと、早々に家に引き返してしまい、話をするチャンスを逃したことを悔いて、入院と同時に始めた日記帳にじれったさを書きなぐったのだった。
二人の間は、一学年違うことと、芽吹いたばかりの感情に戸惑い、目を合わせてお互いに挙動不審な態度を繰り返すのが恒例になりつつあった。
そして、5年生になり、スマホを買ってもらい友人たちとSNSでやり取りをするようになった時、変な噂を一人の友人から聞いた。
その友人の妹が俊哉の妹と同じクラスだそうで、最近元気がなかったと思ったら、家に変な人がやって来て怖いと相談したというのだ。
そういえば今朝の登校の時も、俊哉と沙也加が、他の友人から離れるように、二人で元気なく歩いていたことを思い出し、瑠実はおやつのお菓子を持って、三崎家のインターフォンんを押した。
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