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俊哉と話せるだろうかと期待したのもあるけれど、あいにく俊哉は外出していて、沙也加と母親だけがいた。
なぜか二人はいつもの笑顔がなく、それでも沙也加が自分の部屋に通してくれたので、一体何があったのか尋ねてみた。
「何でもない。心配してくれてありがとう」
「そう…‥。ならいいけれど。何でも相談してね」
すると、沙也加は、落ち着かな気に組んだ足のつま先を、ぶらぶらと揺らしていたのをぴたりと止めて、身を乗り出した。
「ねっ、瑠実ちゃんは、大事なものをどこにしまう?私、お小遣いをどこにしまうか迷っているんだ。忘れたり、無くさなくて済むようなところがあったら教えて」
瑠実は辺りを見回したが、あまり勉強が好きでない沙也加の部屋には、ぬいぐるみやアイドルのポスターなど女の子らしいものが貼ってあるけれど、瑠実が大切なものを入れておくものは無かった。
「参考にならないかもしれないけれど、私は大事なものを本棚に入れるの。お小遣いも一番大事な本に挟んであるのよ」
「へぇ~。それはとってもいい隠し場所ね」
ぎこちなく笑う沙也加に、本棚の無い部屋を意識させたのかと、瑠実は少し罪悪感を覚えたが、気を使わせまいとするのか、沙也加が明るく色々な話題を振るので、すぐにそんな気も吹き飛んで、楽しい時間を過ごした。
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