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その夜、近所で複数の荒々しい男の怒鳴り声が聞こえたかと思うと、女性の悲鳴や、物を壊す音が聞こえ、瑠実はベッドの中で震え上がった。
ずいぶん近くから聞こえたけれど、ひょっとしたらあれは俊哉の家ではなかったのだろうか?瑠実の家は通りから奥まっているので、隣の家に阻まれて俊哉の家は見えない。
遅い時間だったこともあり、かなり荒い言葉使いの怒鳴り声が、結構長いこと聞こえたので、巻き込まれないように用心した周囲の家や瑠実の両親も、誰かが通報したパトカーのサイレンの音を聞いてほっとした。
家から出ないでいたので、まだ翌朝は何が起きたのかは分からなかったが、登校時に俊哉と沙也加の姿が見えないことで、こんなに近くにいながら子供の自分には何の力にもなってあげられないことに胸が痛んだ。
その一日、瑠実は心配で授業も頭に入らず、家に帰る途中で俊哉の家に寄ろうと思ったが、雨戸が閉まったままだったので、そのまま家に帰り、仕事から母が戻るのを今か今かと待って、ドアが開くと同時に昨夜のことを尋ねた。
「今朝、お隣の人から聞いたのだけれど、どうやら借金取りみたい。ご主人が違法カジノかなにかで大損したみたいなの。お商売も上手くいってなかったみたいだし、魔が差したのかしら」
それから、数日後のことだった。瑠実は部活を終えてから、友人とおしゃべりをしていて、いつもよりかなり遅く家に帰った。
すると、思いもよらない人がリビングにいて、瑠実を見るなり、頭を下げて謝ってきた。
「瑠実ちゃん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
三崎のおばさんが喉を詰まらせて泣き出したのを見て、一体何が起こったのかが分からず、オロオロしていると、母に部屋に行っていなさいと言われて、不承不承廊下を歩いて、部屋のドアを開けた。
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