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泉に月の光が差し込み、ゆらゆらと揺れている。二人は泉の周りをゆっくりと歩いていた。揺れる水面をじっと見つめながら出会った頃に思いを馳せていると、「どうしたの、ラフ?」とフォンティーナに顔を覗き込まれる。
ふと、今なら答えてくれるかもしれないと思う。あれから半年。かなり仲を縮められた今なら、もしかしたらあの時の言葉の意味を教えてくれるかもしれない。
「ティーナ。聞きたいことがあるんだ。」
「ええ、何かしら。」
「何故、君に好意を持ってはいけないんだ?」
彼女の顔色が悪くなる。もともと雪のように白い肌色が、白を通り越して真っ青になってしまった。
やはり、聞いてはいけないことだったか。慌てて謝ろうと口を開いたところで、一瞬早くフォンティーナが話し始めた。
「いいえ、いいえ、好意を持ってくださるのは大丈夫なのよ。ラフに好きになっていただけるなんて、とても素敵なことだわ。」
「なら、」
手を降って遮られる。
「……ただ、駄目なの。駄目なのよ。それをあたしに言ってしまっては。この際言ってしまおうと思うのだけれど、あたしはラフのことが好きよ。こんなに人間を好きになったのは初めてだわ。けれど、仮に貴方があたしを好きでいてくれたとしても、それをあたしに言葉で、行動で、返しそうとしないでいただきたいの。心の中であたしを想ってくださるだけでいい。それだけであたしは十分幸せだわ。あたしを愛しく思っているのなら、どうか、どうか、言葉になさらないで。」
早口でまくし立てるように続く話。全部聞いてはいたけれど、ラファエルの耳には、「あたしはラフのことが好きよ」という部分しか残っていなかった。
話し終わったフォンティーナが不安げにこちらを見つめている。薄っすらと涙で潤んだ瞳が自分を見上げているのを見て、ラファエルは思わず彼女を引き寄せ、抱きしめた。
突然のことに硬直するフォンティーナ。そんな彼女に、止める間も与えず、ラファエルはその耳元で愛おしげにそっと囁いた。
「好きだよ。愛してる。フォンティーナ。」
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