第二章「White Eyes」

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 この期に及んで、お前はまだ迷っているのか。  腹から血が噴き出るのも構わず、笙悟は渾身のSPを蒼生に向けた。  蒼生が痛みに顔を顰める。  その瞬間を狙って、超音波を一点に集中させた。  蒼生が死んでも構わない。  そんな気持ちが心を支配した。  笙悟の鬼気迫る反撃に、蒼生は自分の生命の危機をまざまざと感じた。  さっき向けられたSPはただの威嚇にすぎなかったのだとその時悟った。  死ぬ。  そう感じた瞬間、視神経から脳へと電流が走った。  脳の中で、小さく、しかし青く美しく光る化学反応。  消滅。 「ストップ。もういいよ、蒼生。目が青くなってる」  死んだはずのリュウが目の前にいた。暫くの間、蒼生は何が起こっているのか理解できなかった。リュウは死んでいなかったのだろうか。そうだとしても、大怪我は負っていたはずだ。目の前のリュウはかすり傷一つない。 「笙悟の猿芝居、大成功」 「ひどい言い草だな。俺だけ、身体張ったのに」  全身から血を流している笙悟は、立ち上がろうとしてよろめき、要に助けられている。彩香がその斜め後ろで恨めしそうに要を見ている。いつも通りの風景。 「悪いな。お前に覚醒してほしくてさ。荒療治だったけどな。まあ、怒るなよ。俺も命賭けでやったんだ」  やっと全てが芝居で、彩香の幻覚に惑わされ、自分は嵌められたのだと気付いた時、蒼生は可笑しくなり笑いだしてしまった。笙悟が仲間を裏切るはずなどない。そのことが一番嬉しかった。  迫真の演技だったなとからかうと、半分本気だからなと真顔で笙悟が答えるので、さらに可笑しくなった。 「ありがとうな、笙悟。やっと覚醒できた。お前のおかげだ」 「馬鹿。大変なのはここからだぞ。やっとスタート地点に立てただけだ」  笙悟が蒼生の肩に手を置く。 「おめでとうございます、お兄さん。化物のスタート地点、歓迎します」  幹人の声。  瞬間移動で現れた彼に目隠しされた蒼生は、笙悟達の目の前から消えた。
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