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「お兄さん、こっちですよ」
声のする方を反射的に振り向いた瞬間、頬に鋭い痛みが走った。
足元を見ると鋭利な氷の矢が地面に刺さっている。巨大な水を自在に操るだけでも脅威なのに、それを三態全て自由に操るとは、全く恐れ入る。
これが青眼の力か。
蒼生はスクール時代を思い出した。初めて幹人と出会った時、射るように見つめてきた青い右目に、吸い込まれそうになったことを。片目でもこの力。両眼が青と聞くクイーンの力は一体どれ程のものなのか。
「霧なんて関係ねえ。そうだろ、笙悟」
蒼生の言葉に笙悟が笑ったのを感じた。笙悟のSPが高まっていく。だが何も起きない。しかし笙悟の顔には笑みが浮かんでいた。
「リュウ、上だ」
リュウが腕を振り上げる。炎の竜巻が霧と共に空を突き刺す。笙悟の言った通り、そこに幹人がいた。左肩を押さえている。避け切れなかったのだろう。血が滲んでいる。
「笙悟さんのSPを忘れてました。超音波で僕の居場所を探知したんですね」
「ちょっとちょっと、彩香さんのことも忘れないでよねー」
この中で最年長なのに一番幼い顔立ちの百人の彩香が猫撫で声を出す。
「忘れてませんよ。これだけいれば忘れられませんしね。さて、どれが本物の彩香さんか、教えてくださいよ」
彩香のSPは幻覚。その幻覚で自分の分身を作り出していた。白眼のレベルならば、ただ分身を作り出しても格上相手にはすぐばれる。だが銀眼の彩香の力ならば、自分と同じ
SPを持つ分身を作り出せる。正確に言うならば同じSPと錯覚させることができるのだ。さすがの幹人達もすぐには本物を暴けない。
三人に迷いが生まれた。そこを突き、百人の彩香が衝撃波を放つ。美麗と名嘉が避け切れずに直撃する。だが幹人は自分も衝撃波を撃つことで身を捩り、うまく直撃を避けた。美麗と名嘉も大した怪我はしていない。
「もう僕のこと忘れた?」
リュウが瞬間移動で幹人の目の前に現れたかと思うと、その口から炎を吐いた。その名の通り竜のようだと蒼生は地上から見上げながら思った。それほど巨大な炎だった。
だがその炎は再びかわされる。舞うように空を飛ぶ幹人の能力の高さに、蒼生は敵ながら感心してしまう。
「そっちこそ、俺のこと忘れんなよ」
名嘉のシールドが全てを阻む。名嘉が最強の盾を、幹人が最強の矛を持ち襲いかかるマンティスの力は脅威だった。そしてその二人を支えるのが、もう一人、ビショップの美麗。
「お好きに戦って下さっていいですわよ。お二人の力を、私が今から三倍にしてさしあげます」
美麗の瞳が金色に光る。幹人と名嘉が心底楽しそうに微笑む。
「さあ、本番ですよ。お兄さん」
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