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幹人が両腕を宙に掲げる。分厚い水の壁がドーム状に広がる。蒼生達のいる場所から四方一キロ近くは伸びている。簡単には逃げられない。しかも名嘉がシールドで三人を守っているので、攻撃も簡単には届かない。
瞬間移動で逃げるしかない。そう思った時、蒼生の視界の端に泣いている子供の姿が映った。
一人は倒れ、その倒れている子を守るように覆いかぶさり、泣いている男の子。
蒼生は幹人を見た。その表情を見て、状況を理解した上で子供ごと潰そうとしているのだと悟る。
「あなた達を殺して、色なしを全て殺す。それで不平等な世界は消える」
幹人が腕を振り下ろす。その子供の元へ行って瞬間移動で逃げるのは間に合わない。笙悟達が瞬間移動で逃げたが、蒼生だけは地上に立っていた。
「蒼生何してる、逃げろっ」
水の壁に圧し潰される。誰しもがそう思った。
「お兄さん、一体何を」
空を飛んでいたマンティスの三人が突如落下してきた。笙悟達もだ。宙を浮いていた者全てが突如浮力を失った。地上にぶつかる寸前で幹人と笙悟がその力を取り戻し全員を受け止め命は助かったが、何が起こったのか、誰も理解できていなかった。
幹人の水の壁も、名嘉のシールドも、二人の力を増幅していた美麗の力も、全てが一瞬消え去った。
「お兄さん」
「蒼生」
子供を抱きしめた蒼生の両眼は、青く輝いている。
その瞳の光が消えると同時に、蒼生はその場に崩れ落ちた。
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