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序章「Transparency」
腐った人間より、綺麗な化け物でいよう。
そう言ったのは誰だったか。
眠い目を擦りながら考えても、全く思い出せない。その部分だけ靄がかかっているかのように、不透明だ。
ただその言葉だけが、頭の中で何度も繰り返し響いている。
「蒼生、来た」
リュウが小さな火の球と戯れながら言う。
だがリュウが言うずっと前から、蒼生には来ていることがわかっていた。
一、二、三、四。ルーク、ビショップ、ナイト、そしてクイーン。特にクイーンは、五キロ離れていてもSPを使えば存在を感じる。
どんなに微弱なSPであってもだ。
今は高速で移動している。身体に大きな負荷のかかる瞬間移動ではなく、体力は削るが負荷は少ない飛行の方を選択し移動してきているのだろう。蒼生達のいる場所から四キロ、三キロ、と除々に近付いてくる。
「今回も、やっぱり駄目か?」
笙悟の問いに、蒼生は苦笑いで答えた。右腕をあげ、視線の先に落ちていた石を宙に浮かせる。笙悟が蒼生の顔を覗きこみ肩を竦めた。
蒼生の両眼は、深い赤に染まっている。
「雑談終了だよ。団体さんのご到着ー」
彩香が言い終わると同時に、クイーン達が空から降りてきた。
真っ白な軍服を着ている。
汚れのない証。
ああ、思い出した。
腐った人間より、綺麗な化け物でいよう。
そう言ったのは、幹人だ。
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