第三章「Silver Eyes」

1/21
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ

第三章「Silver Eyes」

「嘘でしょ」  彩香がそう呟くまで、誰も事態を呑みこめなかった。蒼生が今目の前から消えた事実を信じられないでいた。 「蒼生、幹人に連れ去られたー?何で」  蒼生の肩を掴んでいたはずの自分の手を見つめ、笙悟は自分を責めた。  蒼生が覚醒した喜びで気が緩んで、超音波探索を怠った。  敵もそれを感知したからこそ踏み込んできたのだろう。ほんの一瞬の隙がこの事態を招いた。悔やんでも悔やみきれない。 「大丈夫、蒼生をすぐ殺すようなことはしないと思う」  リュウが言う。  だがそれは気休めだった。今まで殺しにかかってきた連中なのだ。殺さない保証はない。目隠しすることでどこにいるかわからない状態にし、SPを封じて、ゆっくりと殺す可能性は高い。  笙悟はすぐに超音波探索を始めたが、笙悟の能力が届く範囲にはすでに幹人の気配はなかった。  一瞬の油断。だがその一瞬が許されない状況だということを忘れていた。  今は戦争中なのだ。  生きるか死ぬか、そういう戦いなのだ。 「笙悟、落ち着いて」  リュウがかける声がやけに緩やかに感じられ、妙に気が立つ。焦っているのだと理解しても、抑えられない。苛々が募る。 「蒼生は、必要な人間なんだよ。俺達には」 「笙悟には、の間違いでしょ」 「ちょっとー、二人とも落ち着いて。今何をするべきか、それを考えようよー」  渦巻く焦りと不安の中、一番平静なのが要だった。 「僕、蒼生さんの居場所、わかるかもしれません」
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!