第一章「Red Eyes」

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第一章「Red Eyes」

 十万人に一人。  常人にはない、超能力を持った人間が生まれる割合だ。遺伝することはなく、突然変異で彼らは生まれてくる。  超能力は英語でSuperPower。その頭文字を取ってSPと呼ばれるようになったのは最近のことだ。  今から四十年前、その特殊な能力を持つ人間の存在を認知した政府は、表向きはその存在を否定しながら、しかし水面下では超能力者を集めた“特殊能力防衛開発機関(SPDDM)”を創設した。  超能力者を保護し、その能力を生かした業務を国家のために開発するという名目の組織だったが、能力者を戦争の道具にしようという狙いもあった。そのことを知っていたのはごく一部の限られた上官だけだったが、その訓練の厳しさから、勤めていた者達はSPDDMを軍隊だと揶揄する者もいた。  特殊能力防衛開発機関の下には、能力開発教育機構(PDEM)があった。若い能力者、あるいは能力を自分の意志では操れない未熟な者が集まった、能力者の学校だ。  政府は超能力の研究を莫大な資金を持って行なった。集められた能力者を基に、国の科学力を駆使すれば、能力の分析を行うのは容易だった。  まずわかったことは、超能力には二種類あるということだった。  一つは世間の認識として強い超能力(Super Power)だ。大小はあれど、この力はどの能力者も持ち得るもので、物体移動、瞬間移動、空中浮遊、衝撃波の四種に区別される。  そしてもう一つが特殊能力(Special Power)。人間に誰一人として全く同じ性格のものがいないように、それぞれの個性、各人特有の力があることがわかった。ある者は嵐を呼び、ある者は動物と意志を交わし、ある者は他人の心を読み取った。似た力は存在しても、全く同じ特殊能力は存在しない。個人特有の力。  しかし研究が進むにつれ、その特殊能力を持たない能力者がいることも判明した。赤眼(RedEyes)と分類される能力者である。  超能力者はその能力を使用する時、眼の色が変化する。赤、白、銀、金、そして青。赤から青に移行するに従って、能力の強さや容量は増し、その存在も希小となってくる。  特に青眼(Blue Eyes)は、超能力者の内の一割にも満たない人数しかいない。  その瞳を見た時、とても美しいと思った。蒼生が青眼を見たのは、その時が初めてだった。  右目が青く、左目が金色のその少年は、血に塗れた学生服を着て、応接室の中へ入っていくところだった。  全身で全てを拒絶し、射殺すような視線を投げかけてくる少年。  それが、幹人だった。
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