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駅前で倫子に去られ、またも二人きりにされた莉央は、(なんか言わなくちゃ)と焦り始めた。
「あの、私、代々木で乗り換えなんですけど、新堂さんは?」
「僕は、新宿に行きたい、です」
「あ、じゃあ おんなじ電車ですね」
「そうなの?緑の、でしょ?」
「そうそう」
「緑のに乗れば、いつか着くって言われてるんだけど..」
「え~、やだ、それはそうだけど。全然着く時間が違うよ~」
あまりにも「雑」な知識に、莉央の言葉も「雑」になってしまった。
遼は、そんなことは全く意に介さず、
「そうなのか。う~ん、高田馬場までしか行ったことがなかったからねぇ」
「あ、予備校?」
「そうそう、予備校の寮が東村山にあるんだよね」
「東村山?また、遠いですね」
「うん、だから入試の日は始発で出たんだよね。そのときは確かに雪だったのに..」
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