第一章 受験? 受難?

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 「すみません、遅刻しました」  かなりよく通る声で、試験場に入ってきた遼は 監督官に申告した。 「はい」 監督官は、腕時計を見て まだ時間があることを確認すると、すぐに問題用紙を渡し、 「それでは、席について試験を開始してください」 「はい」 遼は 問題用紙を受け取り、ほっとしてしまった。 (いやいや、これからでしょ)  着てきた、濡れたオーバーコートを脱ぎ、席に着く。 試験問題を開こうとしたとき、 ポタっと水が、頭から滴り落ちた、と、 「はっくしょん!」 遼の声は大きく良く通る。くしゃみもかなり大きい。 慌てて、下に置いたオーバーのポケットを探り、ポケットティッシュを取り出す。 「はっくしょん!」 ティッシュを出して...残念、後一枚しかなかった。 「はっくしょん!」 ここで、やっと最初で最後一枚のティッシュを鼻に当て、拭く。 そして、それを軽く丸めて、頭の雨水を拭く。 「ジュ~」 鼻水をすすりながら、試験開始である。
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