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「すみません、遅刻しました」
かなりよく通る声で、試験場に入ってきた遼は 監督官に申告した。
「はい」
監督官は、腕時計を見て まだ時間があることを確認すると、すぐに問題用紙を渡し、
「それでは、席について試験を開始してください」
「はい」
遼は 問題用紙を受け取り、ほっとしてしまった。
(いやいや、これからでしょ)
着てきた、濡れたオーバーコートを脱ぎ、席に着く。
試験問題を開こうとしたとき、
ポタっと水が、頭から滴り落ちた、と、
「はっくしょん!」
遼の声は大きく良く通る。くしゃみもかなり大きい。
慌てて、下に置いたオーバーのポケットを探り、ポケットティッシュを取り出す。
「はっくしょん!」
ティッシュを出して...残念、後一枚しかなかった。
「はっくしょん!」
ここで、やっと最初で最後一枚のティッシュを鼻に当て、拭く。
そして、それを軽く丸めて、頭の雨水を拭く。
「ジュ~」
鼻水をすすりながら、試験開始である。
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