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「やあ、お待たせ、っていうか、ふたりとも早いよ。今ちょうど11時半でしょ?」
「5分前集合って学校で習ったでしょう?」
倫子が応酬する。中学から同じクラスで同じ授業を受けてきている遼は「そんなの俺は習ってない」とは言い返せないで、言葉に詰まっている。
30分前から来ていた莉央は黙っていた。
「ところで、今日は美女ふたりをどこへ連れて行ってくれるの?」
「あれ?言ってなかったっけ? 今日は、俺の引っ越し先で必要なものを買うんだよ、って言ったろ、杉木さん」
「私はそう聞いてるよ。でも田山さん?は?」
「あ、あの名前でいいです。莉央って呼んでください。あの、私は、高田馬場で西武新宿線に乗り換えられることを教えたお礼に奢ってくれるって..」
「そうそう、莉央ちゃんには、とってもお世話になったんだから、当然だね。
で、お前にはこれからお世話になるからさ、一緒に奢っちゃう」
(え!りおちゃん?おまえ?)
莉央は、自分が名前で呼ばれたことと倫子を「お前」呼ばわりするのと、どっちにかわからないが、ドッキンとした。
...多分、両方だろう。
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