春休み~③

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 「やあ、お待たせ、っていうか、ふたりとも早いよ。今ちょうど11時半でしょ?」 「5分前集合って学校で習ったでしょう?」 倫子が応酬する。中学から同じクラスで同じ授業を受けてきている遼は「そんなの俺は習ってない」とは言い返せないで、言葉に詰まっている。 30分前から来ていた莉央は黙っていた。 「ところで、今日は美女ふたりをどこへ連れて行ってくれるの?」 「あれ?言ってなかったっけ? 今日は、俺の引っ越し先で必要なものを買うんだよ、って言ったろ、杉木さん」 「私はそう聞いてるよ。でも田山さん?は?」 「あ、あの名前でいいです。莉央って呼んでください。あの、私は、高田馬場で西武新宿線に乗り換えられることを教えたお礼に(おご)ってくれるって..」 「そうそう、莉央ちゃんには、とってもお世話になったんだから、当然だね。 で、お前にはこれからお世話になるからさ、一緒に奢っちゃう」 (え!りおちゃん?おまえ?) 莉央は、自分が名前で呼ばれたことと倫子を「お前」呼ばわりするのと、どっちにかわからないが、ドッキンとした。 ...多分、両方だろう。
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