第一章 受験? 受難?

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 田山莉央は、教室に入ってきた「濡れネズミ男」が、自分の隣に座ったとき、絶望的な予感がした。 そして、それは今、現実のものとなりつつある。  くしゃみ、鼻水...頭からは未だ水が(したた)っている。たった一枚くらいのティッシュでは「焼け石に水」だ。莉央は、自分のポケットティッシュを隣に滑らせて、 「どうぞ、それあげます」 と、できるだけ「親切に」言ったつもりだが、自分でもびっくりするくらい「冷たい」空気を(まと)わせてしまった。 「すみません」 と言って、隣に来た男、新堂遼...もちろん莉央は名前は知らない...は、ポケットティッシュを受取り、早速鼻をかみ、再び頭の水をぬぐった。
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