第一章 受験? 受難?

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 試験は、(とどこお)りなく終了した。  帰りの電車の中で、莉央が香と千佳に愚痴を言っている。 「まったく、あの濡れネズミ男のせいよ」 「最初のとき以外、何もなかったんでしょ?」 千佳が、「水も(したた)るいい男」を(かば)う姿勢を見せる。 「あれだけで充分よ。すっかり調子を狂わされちゃったわ」 「他人(ひと)のせいにしないの。全ては運命なのよ」 香は、冷静に というより冷酷に近い口調で、少し訳の分からないことを言っている。 「ああ、もう、この世に神はいないのかしら?いたとしてもバカなの?」 莉央が信心深い人が聞いたら卒倒するようなことを呟いた。 「私は、バカでもイケメンならいいな」 千佳は、外見で人を判断する。(だま)されやすいタイプである。
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