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「あ!」
「お!、よかった」
あの「濡れネズミ男 (今日は濡れていない)」が、人込みの中から現れたかと思うと、ズンズンと莉央に近づいてくる。なぜか、ニコニコしている。
「おめでとう」
「へ?」
思わず、変な声になってしまった。
「合格、おめでとう。ホント良かったよ。落ちてたら僕のせいだと思ってたんだ」
妙にラフな「友達口調」になっているのが気にいらない、と言えば気に入らないが、今はそれどころではない。
「ほんと?受かってた?ほんと?」
こっちも「友達口調」なのは、気にしない。
「うんうん。10456でしょ?あったあった..って、見てないの?自分で」
「ちょっと、人込みは苦手で」
「そっか。でもあったから大丈夫。10456 と・し・ご・ろ あったよ。僕の一つ前だし。ほら、あそこへ行けばわかるんじゃない?」
彼が指さしたのは、合格者に渡される「入学のしおり」みたいなやつを渡しているところだ。
「行こ」
あまりにも自然に手を差し出されたので、つい、その手を握りかけて..慌ててその手を引き戻し、
「あ、いや、ええ行きます」
とにかく、並んでテントを建てた「ブース」のようなところへ向かった。
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