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ラストレター
父が癌で亡くなって早十年。わたしは、ようやく父の使っていた部屋に足を踏み入れる。
小さい頃は、よくこの部屋でテレビゲームやDVDを一緒に見たり、遊んだりしていた。
思い出の詰まった部屋だ。部屋の中にある家具やベッドはそのまま。今では珍しい、黒い大きなブラウン管テレビが置いてあった。
たぶん、使えないから処分しようと母親に言われている。
父が使っていたカラーボックスの中には、沢山のDVDが詰められていた。そのほとんどがホラーで、皆知っているメジャーなホラー作品からあまり知らされていないマイナーな作品もあった。
ホラー意外にも、特撮やパニック映画の作品もある。その全ての作品をわたしは、小さい頃父と見ていた。まあ、怖くて父の背に隠れながらだけどね。
本当に沢山の思い出を残してくれた。
だけど、いつまでも後ろばかり見てはいけない。わたし達は生きているから。
父が癌で亡くなったのは、わたしが中学三年の九月の頃だ。父の癌が見つかったのは、わたしが小学四年くらいの時だろう。
父は五年も癌と闘って来た。癌専門の病院に移ったから、長く生きてくれた。
その五年の間に沢山の思い出を託してくれた。残してくれた。
病院からの外泊の時なんか、映画にも連れて行ってくれたし、電車では四駅先にある町にも行った。そこの町で学校で使うペンケースを買ってくれたな……。
今も大事に使っている。
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