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「お前、さっきのなんなの?」
渡り廊下について、壁に瑛梨奈を置いやる。
よくいう、壁ドンってやつになってるけど、そんなのはどーでもいい。
「好きって思ったから」
「だからって、時と場所を考えろよ」
まさか、瑛梨奈がここまで考え無しに突っ走る奴だとは思わなかった。
「言いたくなっちゃったから」
「バカ正直かよ。つーか、そーいうのは俺のいないところで言えよ」
瑛梨奈の顔をじーっと見つめる。
「.......ワカ?」
「俺と付き合えって言ったじゃん」
「だから、付き合わないって言ったよ」
「だからって、俺の前でやられんのはムカつく」
全然わかんないけど、俺のことを見ていないこいつにイライラが募って仕方ない。
「ムカつくって言われても.......」
「はぁー、わっかんねー。なんて、こんなにムカつくのかわかんなぇ」
塁さんのせいもあるけど、自分のことを見ていない女を見てこんなにイライラするなんて初めてだった。
「振られたことないからじゃ?」
「それだ!お前のことを好きなわけじゃない!」
瑛梨奈の言葉に視界が急にクリアになる。
振られたことどころか、俺は自分から「付き合おう」なんて言ったことすら初めてなわけだけど。
「塁くんと付き合えるように頑張る」
「無理だろ。あの人彼女いるし、別れねーよ」
「わかんないじゃん。頑張るよ」
「ま、精々頑張れよ。ダメなら俺がもらってやる」
どうやら、コイツとはいい友達になれそう。
そんな予感がした入学式。
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