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「で、返事は?」
俺は覚悟を決めて瑛梨奈に尋ねる。
「断った」
「.......へ?」
「あたしなんか変なこと言ったかな?」
「うん。断ったって聞こえた」
「うん。事実だからね」
俺はまた塁さんに取られるのかと思っていたし、その覚悟もしていた。
こんなグダグダしている俺のことを見捨ててもおかしくないとも思った。
「マジで断ったの?」
「うん」
「.......なんで?」
淡い期待が俺の胸に広がるのは仕方の無いことだろう。
「なんでって、なんでそんなこと聞くの?」
「え.......ってなんで泣くんだよ」
瑛梨奈の瞳からはポロポロと涙が零れ落ちていく。
卒業式の打ち上げといい、今日といい最近会う度に瑛梨奈がないている気がするのは気のせいだろうか。
「ごめん、泣くとかウザイね」
「待てよ」
ゴシゴシと涙を服で拭く瑛梨奈の腕を引っ張る。
「ウザイなんて俺、言ったか?そんなこと思ったこともねぇよ」
そのまま自分の腕の中へと入れる。
「期待しちゃうよ?」
「期待ってなんだよ。そんなの俺のセリフだろ」
いつも俺が思っていることを瑛梨奈に言われて首を傾げる。
「だって、ワカには小宮麗華が.......」
また出てきた例のモデルの名前にピクっと肩が動くのが自分でもわかる。
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